過去ログ移行:News001(2000-10-11)
漢方薬治験に品質工学を応用
株式会社ツムラ(http://www.tsumura.co.jp)は医療用漢方薬の臨床試験(治験)を進めています。西洋薬では当たり前の治験ですが、漢方で新薬開発を目指した治験は同社が日本では最初です。現在試験中の温脾湯(おんぴとう)は慢性腎不全の進行を遅らせたり、尿毒症症状を改善する効果が期待されています。この薬は西暦600年ごろの隋の時代に書かれた古典「備急千金要方」に記載されている処方をもとに5種類の生薬を組み合わせたものです。古典の処方なので漢方の世界では古くから実証済みとも言えるわけですが、医療保険の対象になるには、改めて新薬としての治験をして厚生省の承認を受ける必要があります。西洋薬の新薬の場合は通常は1種類の有効成分から成るためその有効性・安全性を証明すればよいのですが、漢方薬の場合複数の生薬の組み合わせが効果を示すため、その組み合わせの最適性を証明する必要がありこれが課題となっていました。
保険の対象になっている日本の医療用漢方薬は1986年の基準改定にともない通常の治験を経ずに承認された147種類がありますが、その後はこの生薬の組み合わせの実証がネックとなり、今回のツムラが新処方の承認申請の最初のケースとなりました。温脾湯の場合5つの成分がありそれらを多・中・少の3段階で組み合わせるだけでも243通りの膨大な実験が必要となります。
ここで同社はメーカーの製造現場などで利用されている統計的な品質工学の手法を取り入れました。この手法により18種類の処方の動物実験のみで、残りの実験結果は科学的に類推できることになり、この結果から最適な配合比率の推定が可能となりました。単純計算で4年以上かかる実験期間を大幅に短縮し、実際は98年7月から10月で実験を完了しました。同年12月に厚生省に結果を提出し、翌年1月には治験開始の了解を得ています。同社は既存の医療用漢方薬の各成分の働きや配合量を再確認する作業でも品質工学を利用しています。「西洋医学を学んだ医師に漢方を使ってもらうには科学的な説明が欠かせない」からであると同社は述べています。
(参考:日経産業新聞 2000年10月11日)